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#24:サトシ(その7)

#24






「お〜い、ジュン!ちょっと、こっち手伝って!」




カウンターの中から店長が童顔のバーテンダーの名前を呼んだ。


ジュンと呼ばれた彼は「はい!」と返事をすると、私の傍から離れていった。


入れ替わるようにサトシが戻ってきて、ピアノの置かれているステージへと上がった。


ポケットから鍵を取り出し、グランドピアノの鍵穴に差し込むとゆっくりと蓋を開けた。


キレイな長い指が音を確かめるように鍵盤を弾く。


静かな店内にサトシの奏でるピアノの音が小気味よく響き渡った。


うっとりとした顔で聴き入っていた私にサトシが声を掛けてきた。




「まひる、何の曲か知ってる?」




サトシにそう振られて私は思わず口ごもった。


音楽は嫌いではないが、得意分野でもない。


流行りの曲は耳にしても、ピアノで奏でるような曲は私の持つ知識には皆無だった。




「知らない?」




そうサトシに優しい声を掛けられると、首を縦に振るのが申し訳ないような気になってくる。




「じゃ、これから俺が教えてあげるよ」




鍵盤を叩く指を強めたサトシが、私にしか会話が聞こえないようにした気がして、私の体がゾクッと震えた。


と、同時に優しい笑みを浮かべるサトシが、何を考えているのか分からなくなって、ついつい裏の顔を探ってしまいたくなる衝動に駆られる。




「…桜木部長は…?」




そんな自分の衝動を押し殺そうと、私は話を逸らしたつもりだった。




「帰ったよ。…いや、会社に戻ったって言った方が正しいな。まひるのこと、くれぐれもよろしくって頼まれたし…あんた、留衣子に好かれてんだな」




サトシはそう言うと鍵盤を叩く指を止めた。


長くキレイな指が薄暗い照明に当たって、浮かび上がって見える。




「さ、出るぞ」




急に静まり返った部屋にサトシの声だけが響いた。


さっきまでの優しい声は消え、私の知っているサトシが顔を覗かせたような気がした。




「おい、ジュン!タクシー呼んで!」




サトシがカウンターに向かって童顔のバーテンダーに声を掛けると、「了解」とすぐに声が返って来た。




「あの…病院なら自分で行けますから。…一人で大丈夫です」




サトシの服の裾を引っ張りながら、私は小さな声で呟いた。




「何?警戒してる?…二人になったら、またあんなことするかも知れないって…」




サトシはジュンの姿を警戒しながら、囁くような声で耳打ちした。


私の背中にゾクゾクっと痺れるような感覚が走る。


サトシの手が私のお尻をそっと撫で上げたからだった。






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#23:サトシ(その6)

#23







サトシとのセックスで火照った体は、熱のせいだと留衣子は信じきっているようだった。


欲望を貪りあって潤んだ目も熱のせいだと思われていた。




「ねぇ、サトシ。今日はお店に出る日なの?もし、出る日じゃなかったら、彼女を病院まで連れていってくれない?」




私の様子を心配した留衣子が突然、サトシにそんな提案をした。


私は慌てて「大丈夫です」と首を横に振りながら、その提案を断った。


しかし、私の言葉は聞き入れられず、サトシはこの店の店長であるもう一人のバーテンダーの所へ向かった。




「桜木部長、私なら大丈夫ですから」




私は尚も留衣子に断りを入れたが、よほど心配してくれていたのだろう。


留衣子は首を縦に振ろうとはしなかった。


会社での留衣子はもっとクールなイメージだった。


男性だろうが女性だろうが関係なく、優しい言葉を掛ける姿を見ることがなかった。


自分の能力を活かして出世する留衣子の姿は女子社員の憧れ的。


しかし、結婚には興味がなく、一人で生きていこうとする姿に共感を持つ女子社員はごく僅かなんじゃないかと勝手ながら思っていた。


そんな風に感じていた留衣子が、今、私の体のことを心配してくれている。


それが嬉しくもあり、意外な一面でもあった。




「店長、明日でもいいって…この人の病院、送ってやれるよ」




サトシがそう言った途端、留衣子の顔がパッと明るい笑顔になり、カウンターに立つ店長に「ありがとう」と言って指を唇に充てるとキスを飛ばした。




「あ〜、良かった。しっかり先生に診て貰って…私は今から会議があるから、あなたが体調悪いこと、川原君にも伝えておくわね。確か、彼も会議に顔を出す筈だから」



留衣子はそう言い残すと、サトシを連れてお店のドアの方に向かって行ってしまった。


私が二人の背中を見送っていると、突然、童顔のバーテンダーが視界に写り込んできた。




「大丈夫ですか?さっき、ここで寝てた時も相当、うなされてましたからね」




そう言ってくれる彼の言葉は嬉しかったが、彼の影に隠れてしまった二人の様子が気になって、私は上の空に返事をした。


化粧室での情事を終えた後のサトシの言葉が、やはり頭から離れなかった。


留衣子のヒモ…


留衣子に飼われている…


そう言ったサトシのことが気になって仕方なかった。




「ねぇ、あのサトシって人、ここで働いてるの?」




私は思わず童顔のバーテンダーに問い掛けた。


バーテンダーは首を横に振ると、隣のフロアを指さした。


薄暗い店内の奥に、グランドピアノが置かれていることに初めて気付く。




「安嶋さんはここでピアノ弾いてるんですよ。顔もあの通りイケメンだから、ファンも多くて…留衣子さんもその一人なんですけどね。…あ、ファンとはちょっと違うか」




私はバーテンダーの言葉を背中で聞きながら、その空間に惹かれるように目を離せずにいた。


薄暗いステージで黒光りするピアノは、何故か物悲しく私の瞳に映り、サトシの姿と重なって見えたのだった。






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#22:サトシ(その5)

#22






精を吐き出した時のサトシの恍惚とした顔が私の脳裏に浮かぶ。


その表情を思い出すだけで、私の中で熱いものが再び燻っていく。


今まで経験したことのない絶頂に、私の蜜壷はまだ、痙攣を繰り返していた。


硬く瞑った目を開けると、すぐ傍にサトシの顔があった。


ハァハァと荒い息遣いが私の頬に触れる。


サトシの視線が私へと注がれ、私もサトシの瞳を見つめた。


サトシの息に触れただけで、イったばかりの私の体は理性を失ったかのように、彼を欲しがった…


それがサトシにも伝わったのか、見つめるサトシの顔が私に近付いてくる。


二人の唇が触れそうになった時、化粧室の外から「サトシ」と呼ぶ声が聞こえた。


その声に驚いたのは、サトシではなく私の方だった。


まさしくサトシの名前を呼んでいたのは、桜木留衣子の声だった。




「…桜木部長?」




私は留衣子の声で現実へと引き戻された…


化粧台から飛び降りると、床に投げ出されたショーツとストッキングを拾い上げて、慌てて身に付け始めた。


名前を呼ばれているサトシの方は、慌てる素振りもなく至って冷静だった。




「あなたが呼ばれてるんでしょ?桜木部長と知り合いだったんだ…」




私は乱れた髪を手で素早く整えて、鏡に映る自分を見つめた。


まだ、サトシとの快楽の余韻を残したままの体は、私の頬にも赤みを残した。


サトシが振り返って私の頬に手を充てた。




「いい?ドア、開けるよ」




サトシの言葉に私は小さく頷いた。


ドアに手を掛けたサトシが背中を向けたまま、私に呟く。




「俺、あの人のヒモだから…留衣子に飼われてるんだ」




もう一度、聞き返そうと思ったがサトシが化粧室のドアを開けたことで、私の言葉は遮られた…


私の頭の中でサトシの言葉が何度となく繰り返される。


留衣子のヒモって…?


飼われてるって…どういうことなんだろう。




「留衣子!」




サトシがドアを開けて留衣子の名前を呼ぶと、朝、コーヒーショップで会った時と同じ格好の留衣子が私達の前に姿を現した。




「気分悪いって言うからさ…」




「庄野さん、大丈夫?病院、一緒に行こうか?」




サトシの言葉に留衣子が心配そうな顔で駆け寄ってきた。


まだ、火照りの治まらない私の体に手を掛けた留衣子は、「まだ熱があるみたいね」と優しく声を掛けてくれた。


そんな私をサトシが見つめていた…


熱く絡まるような悪戯な視線に、私の体がビクンと震えたのだった。







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#21:サトシ(その4)

#21






私のまだ濡れきっていない蜜壷で、サトシの熱くて硬いモノが擦れる。


擦れるたびに蜜壷の中がじんわりと熱くなっていくのが分かる。


根元まで挿し込まれたサトシのソレは、腰を揺らすたびに私の蜜壷の奥を刺激した。


痛みはいつの間にか薄れ、熱さだけが私を支配していく。


蜜壷の中で愛液が溢れ出し、サトシの硬くなったモノをねっとりと包み込んでいった。




「あっ……あんっ…」




サトシの腰の動きが激しくなり、塞がれていた唇が離れ、私の喘ぎ声が化粧室に響き渡った。


すかさず、サトシの空いた手のひらが私の口を覆い、響き渡る声を塞ぎ込んだ。




「感じすぎなんだよ…いやらしい声出して」




掠れたサトシの声が私の耳元に囁かれ、その声にまた感じて濡れる…


サトシの大きな手のひらは、私の鼻と口を塞いで、声どころか息さえも出来ずに、私は苦しくなって全身に力を込めた。




「……し…まる」




サトシの口から漏れる艶かしい声に、私の蜜壷がピクンと痙攣する。


それと同時に愛液も溢れ出し、私の意識が離れていこうとした。




「…イ…ク…」



覆われた手のひらの中で、私は声にならない言葉を呟く。


その瞬間、頭の中で火花が散り、弾けたように意識が飛んだ。


初めて迎える快感に、私の蜜壷はヒクヒクと痙攣を繰り返す。


私が絶頂を迎えると、後を追うようにサトシも「うっ」と声を出して、精を吐き出した。


白く濃い液体が私の秘部に降りかかり、繋がれたサトシと私の体は離された。


化粧台の上に座らされた私の体は、絶頂と共に全身の力が抜け、不安定な状態になった。


大きく肩で息をするサトシが、私の体を支えるように抱きしめてくれた。


ハァハァという声とムッとするような快楽を吐き出した匂いが、化粧室中に立ち込めて、淫靡な空間を作り上げた。


…と、その時だった。


サトシの唇が私の唇に触れようとした時、「サトシ」と呼ぶ馴染みのある声が私達の耳に届いたのだった。






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#20:サトシ(その3)

#20






「ちょ…と、やめて…」




ほんの一瞬のことだった…


サトシに剥ぎ取られたショーツとストッキングは、右足に残されたままになっていた。


私は思わず声を上げようとしたが、サトシの唇に塞がれて声を失った。


生温かい舌がほんの少しの隙間から差し込まれ、私の舌に触れた。


サトシの舌先が触れた瞬間、痺れるような感覚が私を襲う。


私の待っていた感覚が蘇ってきて、私はもう抗うのを止めた。


サトシの生温かい舌に自分の舌を絡ませる…


口の中で絡まり合う舌は、何時しかいやらしく音をたてた。




「…はぁ……んんっ……ぅん…」




唇の端から甘い声が漏れる…


ゾクゾクっと背筋が震え、化粧台の上に座らされ宙に浮いた足先まで震えが走った。


私の秘部にまで クゾク感が伝わり、蜜壷からポタリポタリと愛液が滴っていくのが分かった。


それがサトシにも伝わったのか、私の唇を塞いだまま私の腰を軽く浮かせる。


そして、次の瞬間、私の蜜壷に鈍い痛みが走り抜けた。


サトシの硬くなったモノが、私の濡れ始めた蜜壷に一気に挿し込まれたのだった…




「ひぃっ……あぁぁぁ………ん」




唇の端から漏れる私の声を、サトシは拾い上げるように唇を重ね、吸 い上げた。


サトシの唇で声も漏らすことが出来ない私は、全身に力を込める。


力を込めた体は、サトシの挿し込んだモノを締め付け、蜜壷の中でビクンと跳ねた。


それと同時に、サトシは少しずつ腰を動かし、まだ濡れきっていない私の奥を深く深くえぐり始める。


痛みが全身に広がってきて、私は思わず顔をしかめた。


硬く瞑った目からジワジワと涙が溢れてくる…


それでも、止まることのないサトシの腰の動きに、私は必死で痛みに耐えた。


まだ、開ききっていない蕾がサトシによってこじ開けられ、その痛みが徐々に甘い蜜を溢れさせる予感が私の頭を過ぎっていった。






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#19:サトシ(その2)

#19






サトシの吹きかける息で、私の体はビクンと反応した。


鏡に映る私の反応を愉しむように、サトシの手が唇に充てられる。


唇の形を確かめるように指先が唇の上をゆっくりと動いた。


次第にその指は唇を割って私の歯をなぞっていく。


不思議な感覚に私は甘い溜め息を零した…


その瞬間、歯列を割って口の中に入って来た指は私の舌を刺激し始めた。




「上手に舐めてよ…」




サトシの甘い声に私の頭の芯が痺れてきて、まるで呪文をかけられたように私の舌先はサトシの指を舐め始めた。




「…上手いじゃん、まひる」




覚えたての名前を、まるで何度も呼んできたかのように呟かれると、私の胸はときめいていた。


サトシにもう一度、名前を呼ばれたくなって、私はもっと丁寧にサトシの指をしゃぶった。


夢中になっていると、ふと鏡越しに視線を感じて私は目だけを動かし視線を確かめた。


鏡に映るサトシと目が合うと、サトシはニヤリと笑って私の口から長くて綺麗な指を引き抜くと、自分の舌でそれを舐め上げた。


鏡に映るサトシの仕草を、私は息を呑むように見つめた。




「…欲しいって顔してる…」




キラキラと光っていた私の唾液は、サトシの口の中で溶け合い、飲み込まれていった。


鏡に映る私はゴクリと唾を飲み込んだ。


サトシの言うように鏡の中の私は、今まで見たことのないうっとりとした目をしていたのだ…


サトシの濡れた指はセミロングの私の髪を掻き分け、顎のラインを伝い首筋に落ちる。


肌をなぞる指先が生暖かくて、私の背中がゾクゾクし始めた。


指先が胸の方に滑っていくのを鏡で確認しながら、私の胸は期待で膨らんでいく…


あの日得た快楽は、体がちゃんと覚えているようで、私の胸の突起はもう既に硬くなっていた。




しかし、サトシの手は私の期待を裏切り、胸のラインを触れただけで通り過ぎていった。


恍惚とした私の目が意表をつかれて、戸惑いの表情へと変わった。


サトシはそのことに気付いているのか分からなかったが、その表情を浮かべた瞬間、ふわりと私の体が宙に浮いた。


サトシが私を不意に抱き上げて、鏡を背に化粧台の上に座らせた。


鏡越しではなく直に目を合わせると、サトシの唇が私の唇に軽く触れた。




「この間の続き…やろっか」




そう囁かれて、私の体は悦びを隠しきれずにカッと熱くなった。


私の体の変化を見抜いたサトシは笑みを浮かべながら、私の体に手を伸ばした。


そして、いきなりストッキングとショーツだけを剥ぎ取ると、濡れそぼった蜜壷にいきり立った自分のモノを押し当ててきたのだった。






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#18:サトシ

#18






振り返った男と目が合った。


一瞬、時が止まったように私は彼を見つめた。


見つめる度に胸の鼓動と、体の火照りと、下半身の疼きが一気に私の体を襲ってきた。


蜜 壷の奥からトロトロと愛液が流れ出て、ショーツに染みを作るのが分かる。


私の愛液が溢れる蜜壷の中を掻き回した男の長い指へと視線が落とされると、あの日の興奮が蘇ってきて、私の体は立っていられなくなった。




「あの…」




私は意を決して男に声を掛けようとして、思わず言葉を引っ込めた。


サトシと呼ばれる男は、確かに私と目が合ったのに、素知らぬ振りをしたからだった。


火をつけられた体はすぐには治まりそうになかった。


私は童顔のバーテンダーに化粧室に行くことを告げて、その場を離れたのだった。





化粧室に入ると私は大きな鏡に自分の姿を写した。


体が火照っているせいか、顔まで紅潮しているように見えた。


バッグからポーチを取り出すと、紅潮した頬を隠すようにファンデーションのコンパクトを取り出し頬に乗せる。


紅潮した頬を隠し終えて、私は鏡に映った自分の顔を改めて見つめた。


さっき、サトシと呼ばれる男から知らないふりをされたことが、結構、堪えているのか…鏡の中の私は落胆したような顔をしていた。


ほんのさっきまで名前も知らなかった男に、私は何を求めているのだろう。


いったい、何を期待していたんだろう…


あの日、失恋をして酔っ払った私は、普通の感覚ではなかった。


普通じゃない状況だったから、きっと…あんな淫らなことが出来たのだ。


私は鏡の中の自分にそう言い聞かせる。


あれは夢だったのだと…


あの日の出来事は幻だったんだと…




「…夢なんかじゃなかったろ…」




鍵をかけた筈の化粧室に、いつの間にかサトシが壁に背中をつけて腕組みした格好で立っていた。


まったく気配を感じなかった私は、鏡越しに見つめてくるサトシの目に体が動かなくなるのを感じた。


ゆっくりと私の背後にサトシが近付いてくる。


背後からサトシの腕が私の体に絡みついてきた。




「これって偶然?それとも…」




私の肩に顎を乗せて、サトシは私の敏感な耳に息を吹きかけながら、小さく耳打ちしてきたのだった。






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#17:幻(その3)

#17






「あなた達がいつも週末にデートしてるの、見てたから」




留衣子は口角を上げて微笑むと、コーヒーカップに付いた口紅をごく自然に拭き取った。


私は何故だかその所作から目を離せずにいた。


留衣子は返事のない私に向かって、尚も話を続けた。




「…結婚なんて、つまらないのにね。川原君も落ち着きたかったのかしら。あんなに結婚を嫌がってたのに…」




留衣子の言葉の意味がよく理解できないまま、私はあの日の川原と沙織の幸せそうな顔をぼんやりと思い出した。


二人の結婚の報告に、あんなに傷ついていた筈なのに…


あの日の出来事は、何もかもが現実味を帯びていないようなそんな気がしてならなかった。


何だか頭の中に靄がかかって、留衣子の言葉に集中出来ない…


留衣子の言葉が私の頭の中で響き渡り、次第に声が遠くなっていった。


私の体から異常なくらいの熱が放出され、意識が遠のいていくのを感じた…


留衣子が私を呼ぶ声だけが耳に微かに残っていた。





人の話し声で私は目を覚ました…


どれくらい眠っていたのだろう。


目を開けると視界は薄暗く、ほんのりとオレンジ色のライトが灯っているのが目に映った。


今が昼なのか、それとも夜なのか分からないまま、私は気怠い体を起こすと声のする方へと視線を向けた。


部屋の様子を見回すと、そこはお店のようで、私は店内のソファーに寝かせられていたようだ。




「あ、目が覚めました?」




声を掛けてきたのはバーテンダーの服装を身に纏った童顔の可愛い顔の男性だった。


しかし、この顔に見覚えのある私は、返事をするのを忘れて首を傾げた。




「確か…先週の金曜日にお店にいらしたお客様ですよね」




童顔のバーテンダーにそう言われて、私は思わず「あっ」と声を上げた。


あの日は、かなり酔っ払っていたとは言え、カウンターの下での情事を思い出すと顔から火が出そうなほど恥ずかしく、私はバーテンダーの顔をまともに見ることが出来なかった。




「あの日は大丈夫でした?安嶋さん、ちゃんと家まで送り届けてくれました?」




「安嶋…?あの時の男性、安嶋って言うの?」




私はひょんなことから男の名前を知ることが出でき、俯いていた顔を上げ、童顔のバーテンダーに問い詰める。




「そ、そうですけど…」




私の勢いに押されたのか、バーテンダーは身を引きながら恐る恐る応えた。


…と、その時


お店のドアが開いて長身の男性が店内に入ってきた。


店内は暗く俯いた男性の顔はハッキリとは見えないが、カウンター内にいるもう一人のバーテンダーに用事があるらしく、カウンター前に暫く突っ立っている。


なかなか顔を見せないバーテンダーに痺れを切らしたのか、その場を立ち去ろうとした男性にようやく奥の部屋から出てきたバーテンダーが声を掛けた。




「サトシ!」




名前を呼ばれた男性が振り向いて、私の下半身がピクッと反応する。


「サトシ」と呼ばれた男性は、あの日、私の体に快楽を与えたあの男だった。


私の蜜壷からドクリと愛液が溢れ出していくのを私は止めることが出来なかった。






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#16:幻(その2)

#16






週明け…


あんなに降り続いた雨は、月曜日の朝には嘘のように上がっていた。


失恋したばかりの私を襲った快楽の波は、引き潮のように引いていった。


でも、あの日を思い出すだけで体が求める…


あの日、男を追い掛けて彷徨った街に、男の後ろ姿を見つけることは出来なかった。


濡れそぼった体を温めてくれる胸はなくて、私は風邪を引いた。


降り続いた雨のお陰で、外に出る気分も失せていてちょうど良かったのかも知れない。


気怠い体を起こし、私は会社へと向かう。


まだ、ぼんやりとする頭を目覚めさせようと、会社のすぐ側にあるコーヒーショップに足を止めた。


エスプレッソコーヒーを注文して、私は空いた席に火照りを残した体を預けた。


まだ、完全に風邪は良くなっていないようだった。




「あら、あなた…」




突然、声を掛けられて視線を上げると、隣のフロアの営業部の部長がコーヒーカップを片手に私を見つめていた。




「確か、企画部の庄野さんよね?」




私は慌てて姿勢を正すと、立ち上がって「はい、桜木部長」と返事をした。




「そんなにかしこまらないで。隣、いいかしら?」




春らしい柔らかいピンク色のスーツに身を包んだ女性…


桜木留衣子は、46歳にして花形の営業部の部長に4月から就任した。


会社の看板でもあり、女性社員の憧れの的でもある。


そんな女性に声を掛けられ、しかも名前まで覚えて貰っているなんて、私には信じられないようなことだった。




「川原君、結婚するんだってね」




緊張している私の顔を覗き込みながら、柔らかい笑みを湛えて留衣子が問い掛けてくる。




「てっきりあなたと付き合ってるんだと思ってたわ」




留衣子の言葉に私は、ただただ、驚いた顔を見せた。


私の顔を見ながら、留衣子はクスリと笑う。




「あ、ごめんなさい。あんまりビックリした顔をするから。何で知ってるの?って顔してるわね」




留衣子はそう言うとコーヒーカップに口をつけた…


真っ白いコーヒーカップに、ほんのりと紅く形の良い唇の跡が残るのを私は目で追っていた。


川原との失恋は、いつの間にか私の心の中から少し遠いところにあるように思えた。


それよりも、幻になってしまいそうなあの日の快楽の記憶が私の心の大半を締めていたのだった。






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#15:幻

#15






体を横たえた私の蜜壷から、とめどなく愛液が太腿を伝って流れ落ちる。


まだ、蜜壷の奥はヒクヒクと痙攣を起こしていて、足の指の先まで痺れた感覚を残した。


男にねだったモノを挿入しては貰えなかったが、4本の指でグチャグチャに掻き回された蜜壷は、いつ壊れてもおかしくないほどの衝撃を与えられた。


気持ちがいいのかすら分からなくなって、気が遠くなる寸前に蜜壷からすべての欲望を吐き出した瞬間…


私の頭の中に電流が走り、意識が途絶えたのだった。




目を覚ました私は、薄いシーツを掛けられ、生まれたままの姿で横たわっていた。


シンと静まり返った部屋に、私が起き上がった時の重みベッドが軋む音だけが虚しいくらい大きな音で響いた。


部屋を見回したが、もう、男の姿はなかった…


飲みかけのペットボトルだけが、サイドテーブルに残されたままになっているだけだった。


これは…夢…?


男は幻…だったのだろうか。


一人取り残された小さな部屋で、私は小さな溜め息を吐いた。


そんな訳ない…


こんなにも生々しく、私の体には男に刻み込まれた痕が残っている。


今までに感じたことのない、甘美な快楽が私の蜜壷の中で蠢いている。


まだ、味わい足りないとでも言っているかのように、私の秘部が疼き始める。


この快楽を幻にしたくない…


私はベッドの周りに脱ぎ散らかされた下着や服を急いで纏うと、小さな部屋を後にした。


外に出てみて、ここがようやく古びたラブホテルの一室だと分かった。


ここからなら、私が酔い潰れたラウンジまでそう遠くはない。


私は小雨が降る中、男の後ろ姿を探し始めた。


きっとまだ、そう遠くには行っていない筈だ…


何を根拠にそう思えたのかは分からない。


ただ、この体の疼きをあの男に鎮めて欲しかった。


快楽の火種だけを残して消えた男を幻にしたくなかった…


時計は深夜を回っていた。


週末の街は私の想いを昂らせるように、賑わいを見せていた。






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#14:恐怖から生まれる快楽(その6)

#14






私の喘ぎ声と男が蜜壷を掻き混ぜる音だけが、小さな部屋に響き渡った。


部屋は古い建物のようで、防音がなされているのかは壁を見れば一目瞭然だった。


私の止まらない快楽の声が、部屋の外にも聞こえているのかと思うと、またそれも私に興奮を与える材料となった。


ベッドの上では男の執拗な愛撫は続き、私の喘ぎ声も徐々に掠れ出す。


それでも、男の容赦ない責めに、終わりが感じられることはなかった。


男の指を咥え込んだ蜜壷は、男が指を出し入れする度にグチョグチョと音をたて、3本の指を軽く呑み込めるほどになった。


男は私にとてつもない快楽を与えてきたが、さっき私に宣言した通り、イかせてはくれなかった。


これだけの激しい責めに私は何度、イキそうになっただろう…


イキそうになって蜜壷の奥がヒクヒクと痙攣する度に、寸でで動きを止められた。


その絶妙なタイミングに焦らされ、愛液をポタポタと滴らせて、真っ白いシーツにいくつもの染みを作った。




「…そろそろ、イきたい頃だろ?」




男は蜜壷に出し入れする指を止めると、ニヤニヤと不気味なくらいに口角を上げ、私を見下ろしながら呟いた。




「あなたので…イかせて」




私の掠れた声は何時しか涙声に変わり、泣きながら男に懇願したのだった。


もう、私の中に男に対する羞恥心など微塵も失くなっていた。




「お願い…あなたのを頂戴!!」




私の叫び声が男の耳に届いた時、さっきまでの不気味なくらいの笑みが男から消えた。


うっとりするくらいの優しい笑みを浮かべた男は、涙が零れる頬に手を当てゆっくりと撫でていく…




「…イかせてあげるね」




男は私の耳元で、そう優しく呟くと私の腰を軽々と持ち上げた。


3本の指を飲み込んだ蜜壷が否が応にも私の目に飛び込んできた。


男の3本の指が私の蜜壷からゆっくりと引き抜かれ、キラキラと光る愛液が指先まで絡みつき滴っている…


ジーンズの上からでも分かる、男のはち切れんばかりのモノが、ようやく私の中に入って来るのかと思うと、ゾクゾクする感覚が止まらなかった…




次の瞬間…

私の蜜壷に挿し込まれたのは、私が待ち焦がれた男のモノではなく、愛液を滴らせ、さっき抜いたばかりの指に、更に1本を加えた4本の指だった。


部屋中に私の悲鳴に似た声が響き渡り、蜜壷から噴水のように愛液が飛び散った。


そして、私は絶頂を迎えたままベッドに倒れ込んだのだった。






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#13:恐怖から生まれる快楽(その5)

#13






27年間の人生の中で、人並みに恋愛も経験し、それなりに肉体経験もあるつもりだった。


ただ、お遊びのような恋愛は時間の無駄だと、避けてきたのも確かだった。


恋愛の先には結婚がある…


年齢を重ねて行けばいくほど、その想いは私のこだわりになっていて、道を外すことはどこか許されないことだと思っていた。


友達には体だけの関係を愉しむ子もいたが、所詮、他人事でそんな関係など有り得ないと…寂しい女がすることだと蔑んできた。


でも、本当はどうだったんだろう…


心のどこかでその行為に憧れを抱いていた自分がいたのではないか…


愛する人に抱かれることが幸せなことだと思いながら、今までのセックスに満足を得て来たのか…


こんな風に予想のつかない相手の行動に翻弄され…


でも、嫌な気持ちがしないのは、私の隠された本能が動き出してしまったのかも知れない…


ふとそんな気持ちが頭を過ぎった瞬間


私の下半身に今までに感じたことのない痺れが走った。




「ひぃ…あぁぁっ……ん」




目の前で一瞬、火花が散ったような感覚が起きたのは、愛液の滴る蜜壷に一気に2本の男の長い指が呑み込まれていたせいだった。


男の指は躊躇することなく出し入れされ、私の目にも男の指に絡みついた愛液がキラキラと光っているのが映った。


私は思わず目を逸らし、男の指の動きに合わせるように声を上げた。


そんな私の様子を見ていた男は、片方の空いた手で私の顎を掴むと、私の秘部が見えるように引き寄せる。




「目、逸らすなよ。ちゃんと見てろって…」




威圧した言葉に、私は逆らえないまま伏し目がちにその行為を見る。


男が出し入れする蜜壷から、ねっとりとした愛液がクチャクチャと音を立て溢れていくのを見つめながら、私の興奮が昂っていくのを感じた。




「また感じてやがる」




男はそう言うと、更にもう1本の指を加え、激しく蜜壷を掻き回し始めた。


私の下半身は男の与える強い刺激に耐え切れず、ビクンビクンと男の目の前で痙攣し始めた。


初めて襲ってきた刺激は、私から言葉を奪うと、人間とは思えないほどの喘ぎ声を私の口から放ったのだった。






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#12:恐怖から生まれる快楽(その4)

#12






男の放つ卑猥な言葉でさえも、私には刺激となった…


頭の中ではそうじゃないと否定し続けても、私の体は男の言葉や行為に反応してしまう。


脳から伝わる神経すべてに、媚薬が振り撒かれているのではないかと思うくらい、男の一挙一動に敏感になった。




「…やめて、そんな風に…言わないで」




吐息が漏れる唇から、ようやく振り絞って出した言葉は、男の嘲笑うかのような表情にはまったく意味をなさなかった。


不意に男の体が私から離れ、拘束されていた重みから解放される。


冷静さを取り戻そうとする私の頭と火をつけられた私の体は、余りにもちぐはぐで、私はベッドの上から起き上がることすら出来ずにいた。




バランスを失った私がぼんやりとしている間に、いつの間にか男は投げ出された足元へと移動していた。


男がベッドに上がった重みで体が揺れたことで、私はハッと我に返った。


サイドテーブルに置かれたペットボトルの水を飲んだのだろうか…


男の口元は濡れ、部屋のくすんだ明かりがキラキラと反射している。




「…あんたの下のヨダレ、綺麗にしてやるよ」




男は舌舐めずりすると、放り出された私の両足を掴み、力ずくで足を開かせた。


軽く腰を持ち上げられると両足は宙に浮き、私は力を込めることが出来なくなった。


あっと言う間に男の顔は私の秘部に埋められ、赤く腫れ上がった蕾を吸い上げられる。




「あっ…ダメ…」




下半身に走る痺れるような刺激に、私は無意識に男の髪の毛を掴んだ。


一瞬、男は私を見たが、その行為が止まることはなかった。


充血した蕾は、男の舌で激しく舐め回され吸い上げられて、更に感度を増していく。


私の唇から漏れる声も、完全に喘ぎ声に変わっていた。


蕾に刺激を与え続けられ、充血し切った蕾はジンジンと痺れてきて、やがて感覚を失った。


次第に男の舌はヒダを舐め上げると、愛液が滴る蜜壷へと伸びてきた。


下半身が痺れ、もう抵抗する気力も失くなった私は、掴んでいた男の髪の毛から手を離し、男の頬を両手で挟んで見つめた。




「…もう…」




私の掠れた声に男の動きが止まる。


「イかせて」そう言葉にしようとしたが、男の鋭い視線を受けて思わず言葉を飲み込んだ。


しかし、私が言葉にしようとしたことが分かっていたのか、男は呆れたように鼻で笑った。




「これくらいでへばってんの?…まだ…イカせないよ」




男の含み笑いに経験したことのない世界へ、連れて行かれる恐怖が私を襲ってきたのだった。






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#11:恐怖から生まれる快楽(その3)

#11






男の唇が私の舌に絡みつき、いやらしく音をたてて舌を吸い上げる。


絡まる舌が解かれると、男の舌が私の唇を舐め、そして、私の耳へと移動していった。


移動した男の舌は小刻みに動いて耳の形をなぞらえ、左の耳たぶを甘噛みした。




「…あっ…」




男の執拗な愛撫に体のあちこちが触れられるだけで敏感になっていたが、特に左耳は私の性感帯で、息を吹きかけられただけでも声を出さずにはいられないほど感じてしまった。


私の声でそれに気付いた男は、今度は耳を集中的に攻めてくる。


私は尋常じゃない感度に押さえつかられた体をくねらし、抵抗を試みた。


しかし、頭と首を押さえられ身動きできない私は、男のなすがままだった。


舌先が耳の入口を舐め上げ、熱い吐息が吹きかけられる。


男の舌が容赦なく耳にむしゃぶりついてきて、私は声を上げ軽くイった。


私の意識が朦朧とした瞬間を狙っていたのか、男の手が素早く私の太腿に割って入り、ショーツの中へと入り込んだ。


軽くイってしまった私の体は、男の行為に反応し思わず身を縮こませる。


しかし、一瞬の差で男の長い指は私の濡れそぼった秘部を的確に捉えると、縮こまった体を開くようにゆっくりと上下に動かし始めた。


自由になった手で男の腕を掴んでみたものの、性感帯の左耳は男の舌によっていたぶられ、秘部を撫であげられると快感は私の全身を走り、抵抗にもならなかった。




「すっげー、濡れてる…」




耳を舐めまわしながら囁く男の声が、また私に快感を与える。


次第に秘部をまさぐっていた男の手は、ヒダを割って私の蕾を摘みあげた。




「ひぃ……ああっ…ん」




私の口からあられもない声が発せられ、部屋中に響き渡る。


男はニヤリと笑うと更に蕾を指の腹で擦り上げ、摘み上げては私の口から歓喜の声を上げさせたのだった。




「あんた…ホントはこうされるの、待ってたんだろ。こっちの口のヨダレ、どんどん溢れてきてるよ」




意地悪そうに囁く男のゾクリとする声に、私の蜜壷からまた愛液が流れ出すのを感じていた。






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#10:恐怖から生まれる快楽(その2)

#10






私の唇から零れる声が熱を帯びていく…


胸の突起を摘んだり捏ね回しながら、硬くなったもう片方の突起は男の舌で転がされる。


感度がいいと川原も悦ばせてくれたが、男の執拗さは川原のそれを超えていた。


舌で転がされ吸い上げられた突起は、男の唾液でキラキラと輝いて見え、更に私を興奮させる。


零れる吐息を塞ぐように、男の唇が重ねられた。


行き場を失った私の声は、上唇を吸い上げる音とともに掻き消される。


胸の突起にも刺激を与えられながら、緩ませてしまった唇を割って、男が舌を差し込んできた。


歯列をなぞり、奥へと引っ込んでしまった私の舌を追い詰めるように舌先に触れてくる。


触れた舌の感触が嫌なものではなかったからか…


いつまでも胸ばかりを愛撫する男に物足りなさを感じたからか…


私は触れてきた男の舌に自分の舌を絡めて応えた。


男は私の行為に応えるように、更に口内へと舌を動かし溢れてくる唾液を私の舌に絡め始める。


クチャクチャと淫靡な音が部屋中に響いて、私も負けじと男の舌貪るようにねっとりと絡みついた。


頭の上で拘束された両の手はいつの間にか解かれていて、私に自由が与えられた。


自由になった私の手は、もう抵抗することを忘れてしまったかのように、キスを繰り返す男の頭へと伸びていった。


柔らかい髪が指の間に心地好く触れ、私は男の髪の毛を掴むと力を込め私の方へと引き寄せた。


男の手が胸の突起から離れ、私の頬を両手で優しく挟むと、舌を絡めあった唇からゆっくりと離れていく。


私の唇と男の唇の間に透明な糸が引かれ、名残惜しそうに見つめる私の唇に、再びキスの雨が落とされた。


何だろう…


ほんの一瞬だったが、男の行為に気持ちがあったように感じた。


それは、私の思い過ごしかも知れなかったが、再び落とされたキスは心無しか優しく感じられた…


それは嵐の前の静けさだったのか。


恐怖を忘れていた私の体に男の鋭い目が落とされていたことに、私は気づけずにいたのだった。






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#9:恐怖から生まれる快楽(その1)

#9







表情を持たない男は、黙ったまま私のブラウスのボタンを片手で器用に外していく。


足をばたつかせようにも、馬乗りにされている状態で、下半身も動かすことが出来ず、私は男にされるがままだった。




「…震えてるね。怖いの?」




抑揚のない言葉も、今の私には恐怖でしかなかった。


酔いが覚めていくように、私の頭の中に掛かっていた靄も徐々に取り除かれていく。


割れそうなくらいに痛かった頭も、嘘のように痛みが消えていた。




「あんたさぁ…結構、大手の食品メーカーに勤めてるんだね」




男の言葉に私は硬く瞑っていた目を大きく見開いた。


私の表情が変わったのを見逃さなかった男は、続けざまに言葉を発した。




「企画部の…庄野まひるさん」




私は自分の名前を呼ばれて、更に驚いた顔で男を見つめる。


私の表情の変化を楽しむように、ようやく男の目が笑った気がした。




「どうして…私の名前…」




そう呟きながら、ラウンジで出逢った二人組の男たちが頭を過ぎった。


また、沙織…?


親友だと思っていた沙織に慰めて欲しいと頼まれたと言っていた男たちの言葉を思い出した。




「…あなたも沙織に頼まれたの?」




私の言葉に男は何も答えなかった。


ただ、笑っているように見える瞳の奥には、私を蔑んだ感情を持っているように見えて、私は隙だらけだった自分を今更のように情けなく感じていた。


もう…どうでもいい。


こういう展開に導いてしまったのは自分…


そう思った瞬間、ブラウスのボタンがすべて外され、ピンクがかった肌が男の目の前で露になった。


男の細くて長い手が私の胸のふくらみを捉え、黒いキャミソールの上からゆっくりと形を確かめるように蠢いている。


キャミソールがいつの間にか胸の上までたくし上げられ、今度はブラジャーの上から揉みしだかれる。


男の手の動きは次第に巧妙になり、ブラジャーの布地と胸の突起が擦れ合うようにまさぐり始めた。


強くなく、弱すぎもしない刺激に私の胸の突起は硬くなっていく。


男の手の動きに重なるように吐息が漏れ出して、私は必死に声を押し殺した。


その吐息を聞き逃さなかったのか、男はブラジャーを引き上げると、硬くなった突起を指で軽く摘み上げた。




「あんっ…」




押し殺したつもりの声は、男のたったひと摘みで簡単に解かれ、私は次第に自分の意思を失っていくのだった。






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#8:恐怖

#8






ラウンジの化粧室で会った男は、器用な舌先で私が口から零した液体を舐め上げていく。


唇の周りは舌先を小刻みに震わすように…


そして、首まで垂れた液体は舌全体を使って、ねっとりと絡めとっていった。




「…あっ…」




思わず私の唇の隙間から声が漏れると、私を見下ろす男はニヤリと口角を上げた。




「ほんと、アンタっていやらしいな」




耳元で囁かれた男の声に、また私の体はビクンと跳ねる…




「だから、アイツらに狙われるんだよ」




そう言いながらも尚、男の舌は私の肌をしつこいくらいに、いやらしく舐めまわしていく。


不意に肌を吸い上げられて、私はまた歓喜の声を漏らした。


ダメ…感じちゃ…


頭の中で私は必死に自分の体をコントロールしようとする。


でも、歓喜の波が押し寄せる度に、さっきまで襲ってきた頭の痛みが薄れて来るのが分かって、私はその波に身を任せようとしてしまう。


男が与えてくる刺激は、まるで一種の麻薬のように私の体を侵食していくようだった。


まだ、侵されていない部分が小さな悲鳴をあげる。




『本当の私は、こんなにいやらしい私じゃない――』




しかし、その声は言葉にはならず、湿った吐息に変わっていく。


私に残された抵抗は、ただ、吐息が漏れる唇をギュッと噛み締めることだけだった。




「…アンタ、我慢してんの?」




私の唇を噛み締める姿を見て、男は笑い声を上げた。


狭く汚らしい部屋中に響き渡った声は、私の頭の中にも響いて、残り少なかった私の意識を覚醒させた。


殴りたい。


私の脳が手のひらに司令を出す前に、既に動き出した自分の右腕が男の頬を目掛け、振り落とされる。


パチーン…


渇いた音が静まり返った部屋に響いて、私は閉じていた目をゆっくりと開いた。




「…残念!当たったのは俺の手のひら」




男は意地悪そうにそう言うと、重なった手のひらを握り締め、更にはもう片方の私の手を素早く取ると抵抗できないように頭の上で組み伏した。


男の腕に徐々に力が込められる。


片手で押さえ込まれた両方の手首が、ギリギリと音を立てるように締め上げられ、歓喜の声とは違う苦痛の声が私の口から漏れた。




「ほんのちょっとだけ、慰めてあげようと思っただけだったのに…」




男はそう言うと私が身に纏っていたブラウスのボタンを、片手で器用に一つずつ外していく。


男の顔がいつの間にか表情を持たなくなった。




「や…やめて…お願い…」




震え出した私の口から出た言葉は、懇願だった。




「ヤダね…」




表情を持たなくなった男の声も低く冷たい声に変わっていた。






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#7:夢現(ゆめうつつ)

#7






目を開けた私は、見慣れない天井の壁紙をぼんやりと見つめた。


まだ、意識がハッキリとはしていないが、ここが自分の部屋ではないことくらいは分かる。


少し黄ばんだ壁紙は、煙草のヤニだろうか…


清潔さを感じないこの部屋の匂いも独特なものだった。


徐々に覚醒してくると、途端に私の頭の奥の方でキーンという金属音のようなものが流れ出した。


次第に音が大きくなり、頭痛まで伴いだす。


それは脈打つたびに、ズキンズキンと痛みを増して、私は尋常ではいられなくなった。


とうとう、その痛みに耐えられなくなり、私はベッドの上を数回、ゴロゴロとのたうち回る。


そのベッドの軋みに気付いたのか、隣の部屋から人の気配を感じた。


ドアがゆっくり開き、私の横たわるベッドに跪く人影があった。




「おい、大丈夫か?」




ベッドにの横に跪いているのは低い声の男性のようだ。


激しい頭痛で目が開けられない私には、この男性が誰なのか検討もつかなかった。


ただ、今はこの痛みから解放されたい…


そう願うだけだった。


ベッドの上でのたうち回る私の体に、冷たい男性の指が触れた。


私は抗えないまま男性の腕に引き寄せられ、言葉を発する間もなく唇を塞がれた。


何かの液体が私の渇いた口内と喉をゆっくりと潤していく。


男性の唇と私の唇の隙間から零れた液体が、私の首筋をなぞるように流れていった。




「…う…ん…んんっ…」




その行為は何度か繰り返される…


私の喉を通らなくなった液体を男性の舌が押し込むようにして口の中で蠢いた。


その瞬間、無理矢理押し込められた液体が逆流し、私の口内から飛沫が飛び散った。


私の口から吐き出された液体は真っ白いシーツに飛び散り、あちらこちらにシミを作る。




「…ご、ごめんなさい」




私は咄嗟に体を起こすと、シミを作ったシーツを息も絶え絶えに手繰り寄せる。


男性は背後から、シーツを手繰り寄せる私の手に自分の手を重ねて「いいから」と言った。




「で、でも…」




戸惑う私の背中を支えるように、男性は私を強引にベッドへと引き戻した。


その時、その男性がラウンジの化粧室で会った男性だと分かって、私は「あっ」と声を上げた。


男性は私の声に耳を傾ける風でもなく、私の唇に自分の唇を寄せてきて、私の口から垂れた液体の雫を舌先で舐め始めた。


私の体が男性の舌先の微妙な動きに反応し、ビクンとベッドの上で跳ねたのだった。






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#6:葛藤

#6






私は両隣に座る男たちから、逃れるように化粧室へと向かった。


自分が想像していた以上に酔いが回っていて、踏み出す一歩一歩が雲の上を歩いているようにふわふわとしていた。


バランスを失いそうな体に力を込めて、私はテーブルの並ぶ通路を何とか歩ききった。


ラウンジの隅に薄暗いライトが当てられ、化粧室の文字が何とか確認できた。


狭い通路の奥にある化粧室に向かう途中、背の高い男性とすれ違う。


細い通路が私の目には歪んで見えて、真っ直ぐに歩いている筈の私の体はとうとう、男性の体にぶつかってしまった。




「す、すみません」




そう言って頭を下げた私に強烈な吐き気が襲ってきて、相手の反応も確認しないまま私は化粧室へと飛び込んだ。


頭が割れるように痛かった…


吐物が喉を通る時、胃が締め付けられるほど痛くなって、焼けるようにヒリヒリと痛みが走った。


それでも止まらない嘔吐は、私の体を憔悴させた。


暫くの間、床にうずくまっていたが、もう私の体から水分など一滴も出ない状態で、次第に足先や手のひらに痺れが走っていく。


脱水症状を引き起こしてしまったことに気付いた時には、後の祭りだった。


私は痺れる足で何とか立ち上がり、ドアを一つ隔てた化粧室の洗面所へと向かおうとしてよろめいた。


すべてのお酒を吐き出しても、細胞の隅々まで行き渡ったアルコールは、感覚を私から奪ったままだった。


ようやくドアを開けると、洗面所の前に見知らぬ男性が腕組みしたまま、壁にもたれ掛かっている姿が私の目に飛び込んでくる。


思わず声を上げそうになったが、素早くその男性の手に口を塞がれ、呻き声だけが男性の手のひらと私の口の隙間から零れた。




「まだ、狙われてるよ」




男性が唇を私の耳元に近づけて低いくぐもった声で告げる。


男性の意図することが分からず、私は目だけを見開いて塞がれた唇を必死で動かした。




「一緒に飲んでた二人組、あんたがここから出てくるのを今か今かと待ち構えてるよ」




男性の言葉に私の背筋にゾクリとした震えが走り、不覚にもさっきの男の指使いが、私の下半身の疼きを思い出させた。


まだ、細胞にはアルコールがたっぷり染み込んでいて、私の体が疼くのはそのせいだとぼんやりする頭で身勝手な解釈をする私がいた。




「どうする?逃げる?…それとも、喰われに行く?」




意地悪そうに問う男性が、一体誰なのか…


私の味方なのか…


指先の痺れが酷くなって、私の意識が朦朧としていく中…


「逃げるよ」そんな声が聞こえたような気がした。






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#5:憎悪

#5






男の口から放たれた言葉に私は憤りを感じずにはいられなかった。


瀧口沙織…


昨日まで親友だと思っていた女の名前を耳にした時、朝、会社で目にした光景が脳裏に蘇った。


今までに見たことのない沙織の幸せそうな笑顔が、私の胸をぐちゃぐちゃと音をたてながらかき乱していく。


冷静になろうとすればするほど、彼女の今までの行為が私を見下して蔑んでいるようにしか感じられなかった。


川原隆二と付き合っていたことだって、私は沙織にしか知らせていなかったのに…


いつの間にか彼女は、親友の顔を見せながら、私の大切なものを時間を掛けて奪っていったのだ。




「まひるちゃん、失恋しちゃったんでしょ?」




男の言葉に悪意を感じて、私は思いっきり男の顔を睨みつける。


私の威嚇は男を少し驚かせたが、たった一瞬のことで、男はせせら笑うように私を見つめた。




「そんなに怖い顔したら、美人が台無しだって」




そう言いながら、私の太腿から引き抜いた手を私の目の前にちらつかせて、さっきまで私の秘部を弄んだ指を、舌をいやらしく這わせながら舐め上げた。




「…まひるちゃんのココは、こんなに悦んでるのに」




ショーツから染みでた愛液を舐め上げる男の仕草に、私の秘部がジンジンと疼き出す。


それだけで溢れそうになる自分の体を呪いながら、湧き上がってくる愛液を止めようと目を閉じ唇を噛んだ。


そんな私を見透かすように、男は口角を上げて笑うと、再び、私の太腿に舐め上げた指を割り込ませてくる。




「やっぱり、沙織が言ってた通りだね。まひるちゃんは顔に似合わず、いやらしい女だって…」




男の言葉に私の頬は火を噴いたように紅潮した。


頭の中でプツンと何かが弾けたような音が聞こえた。


私はカウンターテーブルに思いっきり手を着くと、イスが倒れるほどの勢いで立ち上がった。


胸がムカムカする…


頭がカッとなり血が上ったせいか、後頭部にズキンズキンと痛みが襲ってくる。


立ち上がった瞬間、平衡感覚を失った体は男の方に向かってよろめいたが、私の意地が酔った足をその場に踏み留めた。




「ちょっと、まひるちゃん。大丈夫〜?」




そう言って手を出してこなかった左側にいた男が、何とか踏み留まっている腰回りに手を添えてきた。




「触らないで!」




私の腰に添えてきた男の手を力いっぱい払うと、酔っ払った体を引きずるように化粧室へと向かった。


ようやく私の頬に涙が流れた。


彼との恋に敗れたからじゃなく、沙織に対しての憎悪の涙だった。






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#4:戸惑い

#4






「お客様、大丈夫ですか?」




バーテンダーの声で男たちは私から体を離した。


洋服の上からではあったが、体の至るところを触られ、嫌悪感を持ちながらも服の下の肌が火照っていることに気付く。


私は体の火照りを鎮めようと、少し乱れた服を直す振りをして自分の肌を摩った。


唇が微かに震えていて、何も言葉には出来なかった。


頭がクラクラしてきて、意識が途切れそうになる瞬間が襲ってくる。


この体の火照りも、お酒のせい…


お酒が私の体を敏感にしてしまってるだけ…


私は途切れそうになる意識の中で、男たちの手によって体が火照ったことを必死で否定しようとしていた。


テーブルに突っ伏したくなる衝動を抑えながら、閉じようとする瞼に力を込める。


そんな私の様子を見ながら、男たちがニヤリと笑って、再び私の方へと体を近付かせた。




「ねぇ、まひるちゃん」




男がねっとりとした口調で私の耳元に顔を近付け囁く。


髪の毛越しに生温かい息が掛かって、私の体は酷く震えた。




「もう、感じてんじゃないの?」




周りに聞こえないように囁く男の言葉に、私の顔が一気に紅潮した。


洋服の上から私の体が透けて見えているんじゃないかと思うくらい、私には恥ずかしい男の言葉だった。




「ねぇ、どっちが感じるかな。まひるちゃんのココ…」




そう呟いたかと思うと、男の左手がスカートの中に素早く入り込み、太腿を割って私の秘部に触れた。




「…あんっ…」




私の口から漏れた声が耳に届いて、思わず両手を口に当てる。


パンストの上から、私の秘部をなぞる男の手を引き離すよりも先に、感じてしまった声を隠そうとした自分に愕然としていた。


男は慣れた手つきで私の秘部を小刻みになぞり、恍惚としてきた私の表情を見て愉しんでいるようだった。




「まひるちゃん、感じてんの?もう、ショーツまで濡れてるよ」




男が耳元で囁く言葉が、更に私の体に火をつける…


頭の中が真っ白になって男の手を引き離すことも忘れそうになった時、男の言葉で現実へと引き戻された。




「川原さんより俺の方が感じるだろ?」




私は男の言葉で我に返ると、太腿に差し込まれた手を夢中で引き離した。


どうして…?


何でこの男が彼の名前を知っているのだろう。


途切れそうになった意識は繋がれ、私は目を見開いて男の顔を見た。




「まひるちゃんが寂しいだろうからって、相手してやってくれって頼まれたの〜」




「…彼に?」




私は茶化したように喋る男を見据えて、恐る恐る聴いてみる。


男は私の真剣な顔に、再び笑い出すと「沙織だよ、沙織に頼まれたの」と声を大きくして言い放ったのだった。






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#3:初めての感覚

#3







こんなにお酒を飲んだのは初めてのことだった。


会社のお付き合いで、嗜む程度のアルコールの量しか受け付けない体だとずっと思ってきた。


美味しいと思ったお酒が、裏切った彼の好きだったジントニックなのは癪に触るが、ふわふわと宙に浮いたような初めての感覚が思ったより嫌じゃなかった。


もっとお酒を口にすれば、苦しい感覚も忘れられるだろうか…


もっと酔ってしまえば、今日のことはすべて忘れて、何もなかったように朝は来るのだろうか…


そんなことをぼんやり考えながら、私はバーテンダーにもう一杯、ジントニックを注文する。




「…いい飲みっぷりだね」




5杯目のジントニックだっただろうか。


いつの間にか私の両隣に見知らぬ男達が座っていて、私の顔を見ながらニヤニヤしている。




「…庄野まひるさんだよね?」




男の口から私の名前が呼ばれ、酔っていた私の思考が一瞬、正気になった。




「何で私の名前、知ってるの?って言いたげだね」




私が言葉を発する前に、男は得意げな顔でそう言うと、私の頼んだジントニックに口をつけた。


男の喉が鳴り、一気に飲み干され、あっと言う間にジントニックの入っていたグラスは空になった。




「ちょっと、何するのよ」




酔いも手伝ってか、私は強気な言葉で男の手からグラスを奪う。


空っぽになったグラスを覗き込むと、沸ふつと怒りが込み上げてきて、私は男の顔を睨みつけた。




「まひるちゃん、そんなに怒らないでよ〜」




もう一人の男が茶化すように言って、私の肩に馴れ馴れしく触れる。


私が嫌悪感丸出しの顔で、男の手から逃れようと体を傾けると、もう一人の男の腕に私の体が触れて、強引に抱きすくめられた。




「まひるちゃん、相当、酔ってるね。大丈夫かな?」




私は体勢を整えられないまま、男の腕の中で体のあちこちを触られ、思わず身震いをした。




「…やめて」




そう呟いた時、もう一人の男の手のひらがカウンター下の見えないところで、私の太腿を捉えるとスカートの上からくすぐるように触れてきた。


その手はいつの間にかスカートの裾から忍び込み、私の肌に直に触れた時、私の体は嫌悪感と一緒に、また違う初めての感覚を味わっていたのだった。






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#2:誘惑の目

#2







何故か、引き寄せられるように入ったそのラウンジには、黒服のバーテンダーがカウンター内に2人いて、「いらっしゃいませ」と落ち着いた声で私を迎え入れた。


いくつかのテーブル席と、10人ほどは座れるカウンターが目に入り、私は迷わずカウンター席へと足を進めた。




「お一人様ですか?」




黒服のバーテンダーがにこやかな笑顔を向けて問い掛けてきた。


何時もだったら気にならないその言葉が、今の私には耳について、思わず「連れはいません」と冷たく返事をしてしまう。


そんな私の言葉を気に留める風でもなく、相変わらずバーテンダーはにこやかな笑顔のまま「こちらへどうぞ」と席へと促してくれる。


その姿が鼻についたが、きっと、こういう客には慣れているのだと思い直して、私は席へと着いた。


「何になさいますか?」と言いかけたバーテンダーの声を遮るようにジントニックを注文する。


私の勢いに押されたのか、一瞬、バーテンダーが驚いた顔を見せたが、すぐに平静を装い「ジントニックですね、かしこまりました」と丁寧な口調で注文を繰り返した。


店内では生ピアノ演奏が行われていて、所々に座る客達は、奏でられるメロディにうっとりとした表情を浮かべていた。


カウンター席に着いてから、傷心の私には場違いだったと後悔したが、今さら注文を取り消すことも出来ず、悶々とした時間を過ごすこととなった。


ようやくカウンターテーブルにコースターが置かれ、注文したジントニックが目の前に差し出された時、私の視界がぼんやりと滲み始めた。


彼が好きだったお酒…


そう思った瞬間に、今まで張り詰めていた糸がプツリと切れて、私の頬に一筋の涙が零れた。


堰を切ったように溢れ出しそうな涙を必死で堪え、気持ちを紛らわすように目の前のジントニックを一気に飲み干す。


頭の芯がカッと熱くなり、泣きそうだった気持ちが嘘のように遠ざかっていく感覚に陥った。


そうだ…


私、お酒に弱いんだった…


トロンとした目でバーテンダーにお代わりを告げた時、そんなことを思ったが、もう後の祭りだった。


気付けば、私は何杯のお酒を飲み干したのだろう…


いつの間にか、私の両隣に見知らぬ男たちがいて、私の酔った姿を舐めるような目で見つめていた。






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#1:悲しみの雨に打たれて

#1






あの日は雨の降る週末。


雨が降っていても、目の前に広がる傘でさえ賑わっているように見える。


今日が金曜日だなんて、神様も意地悪なことをするものだ。


毎週、楽しみにしていた週末が今日は私の目から色を失くしていた。





今日。


5年勤めた会社で、親友だと思っていた同僚と恋人だと思っていた上司に裏切られた。


ここ数ヶ月、仕事が忙しいからと恋人と会う時間が減っていて、週末だけはどうにか時間を作ってくれていた。


結婚の話も私の視野にはしっかり入っていて、恋人に嫌われないようにと我侭も言わないように気を遣っていたのに…


朝、会社のフロアに入ると同時に、恋人である上司のデスクを取り囲んだ社員達が黄色い歓声を上げているのが聞こえてくる。


「おめでとうございます」という言葉が並べ立てられ、身長の高い彼だけが取り巻きの中から照れくさそうに笑っている顔が見えた。


私の胸がザワザワと音をたてた…


取り巻きの方へと近づく度に、その音は大きくなっていくような気がした。


そして、その取り巻きの隙間から見えたのは、幸せな笑顔を振りまく親友の姿だった。


ほんの一瞬、私の立ち止まった場所だけが、グラグラと揺れるような感覚が襲ってくる。


次いで、胃の中の物が逆流してくるような不快感を覚え、私はその場を急いで離れたのだった。





その後のことは、覚えていない…


ぼんやりとした意識の中で、いつも通りに仕事をこなし、いつも通りに会社を後にした。


携帯電話には、親友からの驚くほどの着信とメールが届いていたけれど、再びディスプレイを見る気にはなれず、私は携帯電話の電源を落としてバッグにしまった。


そして、雨の降る中を歩いている途中、目に留まったラウンジに引き寄せられるように足を踏み入れたのだった。






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#0:恋愛中毒・まひる篇 〜はじまり〜

#0





あなたが始まりだったの。


私の心に寂しさを残したまま…


私の躰に熱を残したまま…


目を閉じれば瞼の裏に焼き付いてるあなたを、消し去ることが出来なくて。


油断すると、あなたに刻み込まれた甘くとろけるような熱が、私の中で疼き始める。




もっと…優しく


もっと…深く


突き上げて…壊れるくらい


もっと…激しく


もっと、もっと…私の愛液を溢れるくらい




あなたを思い出すだけで、躰中が火照ってくるの。


あなたが私をそうさせたのよ。


恋がないと生きられない


恋愛中毒症に…








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Ryo

Author:Ryo
大人の恋愛小説を書いています。

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