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#1:悲しみの雨に打たれて

#1






あの日は雨の降る週末。


雨が降っていても、目の前に広がる傘でさえ賑わっているように見える。


今日が金曜日だなんて、神様も意地悪なことをするものだ。


毎週、楽しみにしていた週末が今日は私の目から色を失くしていた。





今日。


5年勤めた会社で、親友だと思っていた同僚と恋人だと思っていた上司に裏切られた。


ここ数ヶ月、仕事が忙しいからと恋人と会う時間が減っていて、週末だけはどうにか時間を作ってくれていた。


結婚の話も私の視野にはしっかり入っていて、恋人に嫌われないようにと我侭も言わないように気を遣っていたのに…


朝、会社のフロアに入ると同時に、恋人である上司のデスクを取り囲んだ社員達が黄色い歓声を上げているのが聞こえてくる。


「おめでとうございます」という言葉が並べ立てられ、身長の高い彼だけが取り巻きの中から照れくさそうに笑っている顔が見えた。


私の胸がザワザワと音をたてた…


取り巻きの方へと近づく度に、その音は大きくなっていくような気がした。


そして、その取り巻きの隙間から見えたのは、幸せな笑顔を振りまく親友の姿だった。


ほんの一瞬、私の立ち止まった場所だけが、グラグラと揺れるような感覚が襲ってくる。


次いで、胃の中の物が逆流してくるような不快感を覚え、私はその場を急いで離れたのだった。





その後のことは、覚えていない…


ぼんやりとした意識の中で、いつも通りに仕事をこなし、いつも通りに会社を後にした。


携帯電話には、親友からの驚くほどの着信とメールが届いていたけれど、再びディスプレイを見る気にはなれず、私は携帯電話の電源を落としてバッグにしまった。


そして、雨の降る中を歩いている途中、目に留まったラウンジに引き寄せられるように足を踏み入れたのだった。






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