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#17:幻(その3)

#17






「あなた達がいつも週末にデートしてるの、見てたから」




留衣子は口角を上げて微笑むと、コーヒーカップに付いた口紅をごく自然に拭き取った。


私は何故だかその所作から目を離せずにいた。


留衣子は返事のない私に向かって、尚も話を続けた。




「…結婚なんて、つまらないのにね。川原君も落ち着きたかったのかしら。あんなに結婚を嫌がってたのに…」




留衣子の言葉の意味がよく理解できないまま、私はあの日の川原と沙織の幸せそうな顔をぼんやりと思い出した。


二人の結婚の報告に、あんなに傷ついていた筈なのに…


あの日の出来事は、何もかもが現実味を帯びていないようなそんな気がしてならなかった。


何だか頭の中に靄がかかって、留衣子の言葉に集中出来ない…


留衣子の言葉が私の頭の中で響き渡り、次第に声が遠くなっていった。


私の体から異常なくらいの熱が放出され、意識が遠のいていくのを感じた…


留衣子が私を呼ぶ声だけが耳に微かに残っていた。





人の話し声で私は目を覚ました…


どれくらい眠っていたのだろう。


目を開けると視界は薄暗く、ほんのりとオレンジ色のライトが灯っているのが目に映った。


今が昼なのか、それとも夜なのか分からないまま、私は気怠い体を起こすと声のする方へと視線を向けた。


部屋の様子を見回すと、そこはお店のようで、私は店内のソファーに寝かせられていたようだ。




「あ、目が覚めました?」




声を掛けてきたのはバーテンダーの服装を身に纏った童顔の可愛い顔の男性だった。


しかし、この顔に見覚えのある私は、返事をするのを忘れて首を傾げた。




「確か…先週の金曜日にお店にいらしたお客様ですよね」




童顔のバーテンダーにそう言われて、私は思わず「あっ」と声を上げた。


あの日は、かなり酔っ払っていたとは言え、カウンターの下での情事を思い出すと顔から火が出そうなほど恥ずかしく、私はバーテンダーの顔をまともに見ることが出来なかった。




「あの日は大丈夫でした?安嶋さん、ちゃんと家まで送り届けてくれました?」




「安嶋…?あの時の男性、安嶋って言うの?」




私はひょんなことから男の名前を知ることが出でき、俯いていた顔を上げ、童顔のバーテンダーに問い詰める。




「そ、そうですけど…」




私の勢いに押されたのか、バーテンダーは身を引きながら恐る恐る応えた。


…と、その時


お店のドアが開いて長身の男性が店内に入ってきた。


店内は暗く俯いた男性の顔はハッキリとは見えないが、カウンター内にいるもう一人のバーテンダーに用事があるらしく、カウンター前に暫く突っ立っている。


なかなか顔を見せないバーテンダーに痺れを切らしたのか、その場を立ち去ろうとした男性にようやく奥の部屋から出てきたバーテンダーが声を掛けた。




「サトシ!」




名前を呼ばれた男性が振り向いて、私の下半身がピクッと反応する。


「サトシ」と呼ばれた男性は、あの日、私の体に快楽を与えたあの男だった。


私の蜜壷からドクリと愛液が溢れ出していくのを私は止めることが出来なかった。






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大人の恋愛小説を書いています。

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