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#86:堕天使(その5)

#86






まひるは、俺が突然、体を揺すり大きな声を上げたことで、ビクンと体を震わせた。


自慰行為を止めさせられたことでパニック状態になり、「いやー!」と金切り声で泣き喚いた。




「まひる!大丈夫、大丈夫だから…俺がいるから」




そう言ってまひるを落ち着かせようとしたが、まひるは俺の言葉など耳に入れようとはせず、更にパニックに陥ったかのように喚き散らした。


催淫剤の大量服用による副作用か…?


いったい、誰がこんなにたくさんの薬をまひるに飲ませたのか…?


自らこの薬に手を染めてしまったのか…?


パニックを起こすまひるを目にしながら、俺の頭の中には疑問ばかりが浮かんでくる。




「やだよぉ〜!怖い…助けてぇ…」




まるで、子供に戻ったかのように泣き喚くまひるの頬は、溢れる涙でぐっしょりと濡れている。


とにかくこの状況をどうにかしないと、まひるが壊れてしまいそうで、俺はズボンのポケットから携帯電話を取り出し、急いで留衣子に電話を掛けた。


コール5回目で電話が繋がると、着信が俺だと分かっているにも関わらず、留衣子は仕事用の声で答える。


電話の向こうからザワザワとたくさんの人の気配が感じられる。


外せない仕事がある時の留衣子は、決まってそうだった。




「…まひるの様子がおかしい。催淫剤を大量に服用してるみたいだ。どうしてこうなったのか、俺にも分からない…とにかく、マンションに連れて行こうと思ってる。いいか?留衣子」




留衣子に伝えなければならないことだけを要約すると、俺は電話に向かって捲し立てた。


留衣子からは「分かりました。そうして下さい」と無機質な返答があり、俺はその言葉を確認すると早々に電話を切ったのだった。


それからの俺は、自分でもどう動いてまひるを部屋から連れ出したのか分からない。


抗うまひるに服を着せ、喚き散らかす口を塞いで、額に汗を滲ませながら車に乗せたことを、ようやく着いた俺のマンションでぼんやりと思い出していた。




「サトシ!いるんでしょ?」




全身の力が抜けて項垂れた俺の耳に、慌てた留衣子の声が玄関から聞こえてくる。


部屋の扉が開いて、留衣子が姿を現す…


俺が目にしなくても、留衣子の体がピタリと止まったのが空気で感じられた。




「サトシ…いったい…これって」




「…まひるだよ。庄野まひる」




ベッドの上で虚ろな目をし、口元を緩ませながら、クスクスと宙を見て笑う。


変わり果てたまひるの姿を目にした留衣子は、暫くの間、呆然とその場に立ち尽くしていた。






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