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#70:堕落(その12)

#70






「…何だよ。この傷痕…」




胸元を掴まれたTシャツの隙間から、まだしっかりと体に残るロープの赤い痕が、川原の目を釘付けにした。


私は慌てて川原の手を解き、Tシャツの襟元を戻したが、川原の怒りのこもった視線は、私の体から離れることはなかった。


思わず川原から視線を逸らす…


そうしたことで川原は何か確信を得たのか、再び私の纏ったTシャツに手を伸ばすと、怒りで震える手に目一杯の力を込め、それを引き裂いたのだった。


傷だらけの肌はあっと言う間に露にされ、川原の目に晒された。


私は咄嗟に両手で胸を隠すような仕草をしてみたが、すべてのロープの痕を隠しきることなど出来なかった。




「…アイツにされたんだろ?」




川原の低くくぐもった声が微かに震えて私の耳に届いた。


逸らした目をもう一度、川原に向けた途端、私の傷だらけの体は川原の大きな胸に包み込まれた。




「ちょっと…川原さん」




予想もしなかった川原の行動に戸惑っていると、川原は更に私を強く抱きしめた。


耳元に触れた唇が熱い息を帯びて、言葉と一緒に私に吹きかけられる。




「…アイツに、どんな風にイカされたんだよ…」




川原の言葉に私の顔がカッと血が上ったように赤くなった。


サトシとの行為が思い出され、体の芯が火照ってくるのが分かる。




「何でそんなこと…」




川原にそのことを悟られたくなくて、私は抱きしめられた腕から逃れようと、身をよじった。


しかし、思いの外、強く抱きしめられた体はピクリとも動かなかった。




「お前も…もう、アイツの中毒患者なのか?」




川原は私が弱いと分かっている耳元に、執拗なほど生温かい息を吐きながら呟いてくる。


体の隅々にまで、力を込めて抵抗を試みていた私の動きが、川原の言葉でピタリと止まった。




「…お前も…って?」




私の不安気な表情を見て、川原がいきなり声をたてて笑い出した。


川原の笑いが何を意味しているのか分からず、更に私は不思議そうな顔をして川原を見つめた。




「…お前、アイツに騙されてるんだよ」




半信半疑な私を見つめながら、今度はハッキリとした口調で言い放った。


川原の言葉に呆然とする私は床に押し倒され、力の抜けた体から身に纏ったものをすべて剥ぎ取られた。


冷たい床の感触が全身を包むと、川原のガッチリとした体が直ぐ様、覆い被さってきたのだった。






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