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#66:堕落(その8)

#66






私はサトシの腕にしがみついたまま、いつの間にか眠りに堕ちた。


目を覚ました時にはサトシの姿はなく、何時もと変わらない自分の部屋のベッドの上で、自分の体を抱きかかえるように小さくなっていた。




「サトシ…?」




思わずそう呟いてみたが、サトシからの返事はない。


代わりに陽の射したカーテンの向こうのベランダから、朝を知らせる小鳥の囀りが聞こえてくるだけだった。


とても静かな部屋の中は、まるで今までの出来事が夢だったかのような錯覚を私に与えた。


しかし、その錯覚はすぐに私を現実へと引き戻した。


ベッドから起き上がった私に襲い掛かる鈍い痛みと、私の体にくっきりと残った傷痕は今までの出来事を生々しく思い出させ、震えを走らせた。


体に残る熱は私に現実を残しながら、次第に私の意識を朦朧とさせた…


傷口から発せられた熱で、私はそれから丸二日間、ベッドに倒れ込んだまま虚ろな時間を過ごしたのだった。


ようやく熱が引いた頃、私は携帯電話の着信で目を覚ました。


私はまだ、目覚めきっていない体を無理矢理起こすと、ベッド横のサイドテーブルから携帯電話を拾い上げる。


ディスプレイに映し出されたのは、留衣子の名前だった。


私は慌てて着信をとると、スピーカーから留衣子の艶かしい声が聞こえてきた。




「体の方はどう?…運転手の上條があなたに酷いことしたって聞いて…」




「え…?」




「ごめんなさいね。せっかく運転手に戻してあげたのに、また、こんなことするなんて…
あなたのこと、守れなかったサトシにもきつく言っておいたから。…会社、出てこれそう?」




留衣子の口から出たサトシの名前を聞いて、私の心がドクンと音をたてた…


サトシの名前を耳にしただけで、貪るように求め合ったあの夜が思い出され、私の下半身がジンジンと疼きだした。


また、心とは裏腹に体がサトシの熱いモノを求めてしまう私がいる。




「サト…いえ、安島さんは…?」




私はあれから連絡のないサトシのことが気になって、留衣子にそう尋ねてみた。




「…あなたを上條から守れなかったお仕置きをしてる最中よ。ねぇ、庄野さん。そんなにサトシのことが気になるの?」




留衣子の艶やかな声が、急にトーンを落としたように私の耳に伝わった。


電話の向こう側の留衣子の嫉妬心に、私は火を点けてしまったようだった。






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