2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

#53:秘密(その14)

#53






私の腕に痣が出来るんじゃないかと思うくらい、上條は力任せに私を引っ張っていく。




「やめろ…」




床に横たわったサトシは、自分の横を通り過ぎる上條の足首を両手で掴むと、進む足を必死で止めようとした。


行き先を遮られた上條は、チッと舌打ちをしながら、サトシの掴んだ腕を離そうと足を蹴り上げた。


蹴り上げた足がサトシの額に当たり、ゴツっと鈍い音をたてた。


それでもサトシは顔を歪ませながら、上條の足を離そうとはしなかった。




「離せって!」



上條はそう叫んだ後、床に横たわるサトシに視線を合わせるようにしゃがみ込んだ。




「…さっきまでお前も愉しんで来たんだろ?こんなに傷作って…留衣子姫を悦ばせて来たんだろ?」




いやらしい笑みを浮かべた上條は、サトシの耳元でそう囁いた。


そして、まだ生々しく血を滲ませている背中の傷に指を這わせる。




「痛っ!」




傷口に上條の指先が強く触れて、サトシは小さな悲鳴をあげた。


傷口から再び血が滲むのを、上條は何だか嬉しそうに見つめている。




「ほら、この痛みがいつしか快感に変わるんだぜ。最初は嫌でも、そのうち欲しくて欲しくて仕方なくなるんだ…俺がそうだったようにな」




指先についた血を舌を突き出して舐める上條の姿は、恐怖の何者でもなかった。


私は逃げ出したい衝動に駆られながら、上條の気の緩む隙を狙っていた。


しかし、逃げ出せたところでサトシはどうなってしまうのだろう…


上手くこの部屋から逃げ出せたとしても、私はサトシを置き去りにするつもりなのだろうか…


傷だらけのサトシを目の前に、私の心に迷いが生じていた。




「さてと…サトシ、そろそろ足を離してくれないか。お前のお気入りの子をお前みたいにしてやるからさ」




上條はそう言うと、私を掴んでいた手を離し、サトシの傷口に不意の一撃を喰らわした。


サトシの短くも深い呻き声は、まるで地鳴りのように私の耳に響いてきた。


体を丸めて痛みを堪えるサトシが、私の顔を咄嗟に見つめた。


「逃げろ」そう、サトシの唇が声もなく動く…


私の体は一瞬、後ずさりしたが、やはりその先の一歩を踏み出すことが出来なかった。


上條の高笑いがサトシの呻き声を消した。


笑いが止んだ後、上條は私の腕をもう一度掴み直すと、鍵の開いたその部屋へと私を突き飛ばしたのだった。






ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村





コメント

非公開コメント

プロフィール

Ryo

Author:Ryo
大人の恋愛小説を書いています。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR