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#50:秘密(その11)

#50






秘密の部屋からサトシの手だけが現れ、何かを探すように宙を彷徨っていた。


私は思わずサトシの手を両手で握り、ギュッと力を込めた。


床を這い蹲るように現れたサトシの顔はとても疲れていて、憔悴しきった様子だった。


この部屋の中で留衣子とどんな情事を繰り広げたのだろう…


サトシの意識が朦朧とするくらい、交わったのだろうか…


ドアの隙間から覗く私の目に、真っ暗な部屋の中は何も見えず、余計に私の頭の中の妄想を駆り立てていく。


二人の情事を想像する度に、胸のモヤモヤが大きくなっていくような気がして、何だか複雑な気持ちになった。


しかし、サトシがドアの隙間からようやく上半身を現した時、私の甘い妄想は突如、打ち砕かれたのだった。




「サ…トシ、…サトシ!!」




私は気が動転したのか、サトシの背中につけられた無数の傷痕から血が滲むのを見て、思わず大きな声で名前を呼んだ。


私の呼び声に返事はないまま、サトシは秘密の部屋から抜け出すことに必死なようだった。




「ま…ひる?」




サトシが掠れる声で私の名前を呟いた時には、秘密の部屋のドアは締まり、傷だらけのサトシの姿だけが床に残された。


私が傍に駆け寄った時には、サトシの意識はなくぐったりとしていた。




「相当、やられたなぁ〜」




サトシの名前をもう一度呼ぼうとした時、私の背後で聞き覚えのある声が響いた。


振り向くとそこには上條が立っていて、私を驚かせた。


どうやってこの部屋に入ったのだろう…


私は不審者を見るような目で上條を見つめた。


昼間の車の中での出来事が脳裏に蘇ってきて、胸が焼けるような嫌悪感が私を襲った。


そんな私の気持ちを余所に、上條はニヤニヤと笑いながらこちらへと向かってくる。




「まったく…無用心だなぁ〜、鍵、開いたままだったぞ」




蛇に睨まれたカエルのように、私はその場から動けず上條の近付いてくるのを身構える。


上條は私の横を通り過ぎると、床にうつ伏せになったサトシの体に足をかけた。


上條の足で勢い良く仰向けになったサトシの体は、衝撃を受けたにも関わらずぐったりとしたままだった。




「おい!これくらいでへばってんじゃねーぞ!」




意識のないサトシに向かって、上條は大きな声を上げる。


私はこれ以上、サトシに危害が加わらないように急いでサトシの元に駆け寄ると、上條のことを鋭い目で睨みつけたのだった。






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