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#92:堕天使(その11)

#92






俺の耳に甘い吐息が微かに聞こえてくる。


さっきの夢とは少し違う、リアルな音が俺の耳を刺激していた。


聞こえてくる吐息は艶かしく響き、俺の閉じていた目を醒まさせた。




「まひる…?」




まだ、夢の続きを見ているような気分で、俺は思わずまひるの名前を呟いた。


映し出される天井から視界を落とし、隣で眠っている筈のまひるの姿を確認する。


甘い吐息が聞こえた筈なのに、俺の隣にはまひるの姿はなく、真っ白のシーツが少し乱れている。


まだ、微かにぬくもりの残るベッドは、ほんのさっきまでまひるが傍にいたことを物語っていた。


ベッドから起き上がって周囲を見回すが、まひるの姿はやはりなかった。


しかし、どこからか微かに声がしていて、俺の首を傾げさせた。




「あぁぁん…」




静かな部屋に今度は、さっきまでの甘い吐息とは違う喘ぎ声が聞こえてきて、俺はその声に導かれるようにベッドから離れた。


聞こえてくるのは、どうも俺が留衣子に調教を受けていた秘密の部屋からだった。


俺は自分の気配を消しながら、息を潜めて秘密の部屋のドアの前に立つ。


ドアのほんの僅かな隙間から、やはり声が漏れてきていて、俺の鼓動は早鐘を打ち始める。


昨日の羽海野が打った注射は効かなかったのか…?


目覚めたまひるは、この秘密の部屋を見つけて、自慰行為に耽っているのだろうか?


俺は、掴んだドアノブをゆっくりと開けて、薄暗い部屋の中を覗き込んだ。


部屋の中央に置かれた木の椅子に、全裸になったまひるの姿があった。


背中を椅子の背もたれに預けて、首を反らして喘ぐまひるがいた。


まひるの白い肌だけが、薄暗い部屋の中でぼんやりと浮き上がり、淫らな空間を作り上げている。




「ねえ…もっと…ちょうだい…もっと…もっとぉ…」




まひるの大きくなる喘ぎ声に、やはり1回の注射だけでは効き目はなかったのかと、落胆の溜め息が落ちる。


秘密の部屋の入口に脱ぎ散らかされたまひるの衣類を拾い集めて、俺はまひるをどう鎮めようかと考えながら、悦びの声をあげるまひるへと近づいていった。




「本当にアンタ、淫乱だなぁ…こんなにヨダレ、垂らしまくってさ…あの時よりそそるよ」




まひるだけしかいないと思っていたこの部屋に、誰かがいた。


それが分かった瞬間、俺の心臓はギュッと締め付けられたように息苦しくなり、果ててしまいそうな感覚を覚えた。




「お前だけで独り占めって、ずるいんじゃね?なぁ…サトシ」




聞き覚えのあるその声に、俺の体に戦慄が走る…


その声は紛れもなく、以前この部屋で、俺自身が分厚いガラスの灰皿を頭に打ち付けて意識を失わせた上條の声だった。






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