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#101:堕天使(その20)

#101






「もう…何なの、途中で止めるなんて…あなたらしくないじゃない?」




俺の身体から不意に離された留衣子の身体は、バランスを失い壁にもたれ掛かる格好になった。


もう、既にその気だった留衣子は、そう吐き捨てながら俺を睨みつける。




「悪い…留衣子」




俺はバツが悪そうな声をあげて、留衣子から目を逸らした。




「…桜木…部長…?」




その時…


俺が目を逸らした先に、呆然と立ち尽くすまひるの姿があった。


まひるの声に驚いた留衣子は、露わになった白い肌を隠すように、はだけたシャツを慌てて戻そうとしている。


留衣子の行動に、呆然としていたまひるも、思わず顔を俯かせた。




「…この人…桜木部長の…恋人…ですか?」




まひるは顔を俯かせたまま、小さな声で問い掛けてくる。


その声に留衣子は「まぁ…ね」と曖昧な返事を返した。




「そうだったんですね。どうりで、私に覚えがなかったから…」




「…覚えて…ないの?この人のこと…」




「えぇ…前にどこかでお会いしましたっけ…?」




「えぇ、そう。でも、あの時は…あなた、とっても酔っ払ってたから…」




まひるの様子がおかしいことを察知した留衣子は、素早くまひるの言葉に会話を合わせた。


そんな留衣子の言葉を聞いて、人形のように表情のなかったまひるが、納得し安心する様が窺えた。




「ごめんなさい…お邪魔…してしまって…」




まひるはそう言うと、そそくさと部屋の中へと姿を消した。


廊下に残された俺と留衣子の間に微妙な空気が流れていた…




「何だか…彼女、庄野さん…別人みたいね。表情のないお人形さんみたいで…怖かったわ」




留衣子は俺の身体に隠れるように、声を潜めて呟いた。


俺の目の前に差し出された腕には鳥肌が立っている。




「本当に彼女…あなたのこと、覚えていないみたいね。そんな子、面倒見れるの?サトシ…」




留衣子が心配そうな顔をしながら、俺の顔を覗き込んだ。


留衣子の表情が酷く心配しているように見えて、俺は返事に思わず躊躇してしまう…




「断ろうかと思ってたけど…やっぱり決めたわ」




俺が戸惑っていることに気付いてか、留衣子は思い出したかのように声をあげた。


その留衣子の決断に、俺の心臓がドクンと音をたてる。


留衣子から放たれる言葉が、俺の運命を決めてしまうような気がして、俺はゴクリと喉を鳴らして身構えた。






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